今日は、”将棋界の一番長い日”です。将棋のプロ棋士上位10人が戦うリーグ戦、A級順位戦の最終局が一斉に行われる日です。朝10:00から対局が始まり、深夜から未明にかけて勝負が決します。順位が確定し、名人挑戦者決定と降級者決定のドラマが繰り広げられるので、”将棋界の一番長い日”と言われているのでしょう。
過去の印象的な場面
過去の”将棋界の一番長い日”で私の印象に一番残っているは、数々のタイトルを保持した経験のある佐藤康光九段が降級のかかった一番となった時です。詰むや詰まざるやの局面でまさしく鬼の形相になって考えている状況が画面に映り、悲壮感が伝わって来て痛々しかったです。私は将棋は弱くて、解説を聞くのが好きで観戦しているだけなので、難しい局面は自分ではよくわからないんですが、テレビでは初心者にも分かるようにプロ棋士が解説してくれますので局面も理解できて楽しめます。解説では、現局面の候補手をいくつか指し進めてみてどうなるかというのをやってくれるので、そんな先の局面のことが一目で分かるのかという驚きとともに、そういうふうに進むとなるほどどちらかが有利になってしまうなというのが理解できます。そして、その解説を上回る手が実際に指される時もしばしばで、その手の意味を解説で聞くのもまた楽しいです。当然対局者は解説者よりも集中して考えているので対局者が指した手の方が深い意味があって良い手の場合の方が多いのですが、持ち時間がなくなってくると人間なのでミスをしたりもします。佐藤康光九段のその対局は、結局佐藤康光九段が勝ったのですが、実は難しい手順で詰みが生じていて負けていた局面があり、それを発見していた先崎学八段が終局と同時に対局場に乱入し、「歩が足りてるんだよ(だから詰みがあって佐藤康光九段が負けだったんだよ)」と発言し話題になりました。
米長哲学
将棋界には、現会長の米長邦雄氏の米長哲学というのがあり、「自分にとっては消化試合だが相手にとって重要な対局であれば、相手を全力で負かす」という考え方が浸透しているらしく、どれも真剣な対局で観戦していて楽しいです。もちろん、崖っぷちに立たされている棋士の方が心底必死なので、佐藤康光九段のように難を逃れる棋士もいますが、米長哲学を証明するかのように、深浦康市九段を始めとして可哀想なくらい憂き目に遭っている棋士もたくさんいます。
将棋の観戦
将棋の観戦について、渡辺明竜王が書いた本でなるほどなと思った部分を軽く引用して紹介しておきます。
〜スポーツを観るように将棋も〜 例えばプロ野球を見る時。「今のは振っちゃダメなんだよ!」とか「それくらい捕れよ!」。サッカーを見る時。「そこじゃないよ!今、右サイドが空いていたじゃんか!」「それくらいしっかり決めろよ!」。自分ではできないのはわかっていてもこのようなことをいいながらみますよね。それと同じことを将棋でもやってもらいたいのです。 「それくらい捕れよ!」と言いはしますが、実際に自分がやれと言われたら絶対にできません。「しっかり決めろよ!」も同じで自分では決められません。将棋もそんなふうに無責任に楽しんでほしい。
将棋以外の話題
将棋以外のことで”将棋界の一番長い日”に話題になることが多いのが丸山忠久九段です。有名なのは、丸山忠久九段が深夜に自分で用意した夜食のカロリーメイトをほおばっている時に相手の藤井九段が投了し、ちょうどその様子がテレビで放映され、”もぐもぐ”投了と名付けられて話題になりました。他にも、対局場である東京将棋会館の対局開始前の様子が毎年テレビで生放送されるのですが、気合いをいれて和服で登場する棋士や、神妙な面持ちで入館する棋士の様子が映し出される中、自転車に乗って颯爽と登場してびっくりさせた年もありました。また別の年には、夜中の煮詰まった時間に頭に冷えピタを貼って考えていたこともありました。 さて、今年はどんなドラマが繰り広げられるのでしょうか、楽しみです。先の丸山忠久九段は、いつもは上位から中位の安定した順位なのですが、今年は自力残留の目がなく、降級の可能性がかなり高い一番になっています。また、現在タイトルを2つ保持している久保利明棋王・王将は、負けると降級の可能性があります。
今年の対局
今年A級で戦っている棋士は全員タイトル経験者です。
- ▲羽生善治王位・棋聖 — △郷田真隆九段
- ▲佐藤康光九段 — △渡辺明竜王
- ▲高橋道雄九段 — △谷川浩司九段
- ▲三浦弘行八段 — △屋敷伸之九段
- ▲丸山忠久九段 — △久保利明棋王・王将
NHK BS の放送
テレビ放送は、いつものように NHK BS で行われます。 ★放送時間
- 9:30~11:00
- 16:00~18:00
- 24:00~26:00
★解説
木村一基八段、村山慈明五段
★ゲスト
森内俊之名人
ニコニコ動画の放送
今年は、新しい試みとしてニコニコ動画で生放送が行われるようです。 ★アドレス
http://live.nicovideo.jp/watch/lv83195010?ref=top
★放送時間
- 21:00〜27:00
★解説
行方尚史八段、北浜健介七段、松尾歩七段